相続対策は、@相続税の軽減対策 A相続財産の分割計画 B相続税納税資金の準備の三つについて、同時並行的に検討し実行していく必要があると言われております。
世の中ではとかく、このうちの@相続税の軽減対策だけが大きく取り上げられ、相続対策とは相続税の節税、あるいは脱税にも近い奇抜な方法を実行することのようにさえ思われています。しかし相続税法等の改正を経た現在では、目を見張る様なドラスティックな節税方法は少なくなりました。そこで、相続を「争族」にしない為の分割計画、納税するのに財産を切り売りしないで済む様な納税資金の準備が、重要な対策として浮かび上がってくるのです。
それはそれとして、実はそれ以前の基本対策として、相続財産、特に不動産の整理・整頓があることにお気付きでしょうか。今まで、様々な相続対策に関わってきて、この整理整頓ということが意外に疎かにされていることに気付きました。そこでその問題をまず取り上げてみようと思います。
財産のなかで、現金・預金はともかく、有価証券等ならば、書類さえ整っていれば相続発生後もその状況が比較的分かり易いのですが、不動産では個々の不動産ごとに、ご本人しか分からない特別な事情がある場合があります。
例えば、第一に、土地などの所在です。特に山林、あるいは遠隔の土地などの場合は相続発生後所在不明となることさえあります。所在は明らかでしょうか?
第二に、その土地の地境問題です。一般に地境は、境界抗が入っていて、なおかつ実測図に隣接地主の地境承諾印が取れていれば概ね(絶対ではありません!)大丈夫ですが、昔から所有されている土地の場合、地境が明瞭になっていない所が数多く見られるのが実状です。地価の低かった昔は、隣人との付き合いを考慮して、数センチ・数十センチの地境争いなどする気はなかったのでしょう。地境は明確でしょうか?
第三に、土地を担保に借入をして、抵当権等の他人の権利が付いたことがあり、今はもう借入金返済となっているが、登記をはずし忘れているものなどもあります。登記簿記載に注意されているでしょうか?
第四に、契約書等の整備です。借地人・借家人との関係は土地問題でも最も重要ですが、資産管理を本人だけで行っている場合は特に、相続発生後、極端な言い方ですが「死人に口無し」で、その後の諸々の交渉が地主・家主側にすべて不利となってしまうことも起きます。本人同士の口頭の約束は改めて書面化し、また契約書が不備ならば作り直し、後日の為に備えておく必要が痛感されます。書類は整っているでしょうか?
整理・整頓を以上の四項目にまとめてみましたが、実際にはこの各項目ごとに、更にいくつもの課題が重なってきて、なかなか容易なことではありません。ご自身でおやりになるにせよ、専門家達の手を借りるにせよ、「天は自ら助くる者を助く」、まず手を付けるのはご本人なのです。
「思い立ったが吉日」です。是非今日にでも基本対策をお立てになるよう、おすすめいたします。
(株)ハート財産パートナーズ 林 弘明 |
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