相続対策は
財産は誰が守るか

  戦後は、家長制がなくなったので、家長とは言わず、世帯主あるいは、扶養義務者などと言っていますが、一家の主(あるじ)は、家長という言葉があろうとなかろうとその家族の生命財産を、外敵から守る義務を負っています。「義務」などと四角ばらなくても、家族への愛情から当然にその務めを果たしているのが普通です。それが、家族の自然のあり方だと思います。
では、外敵から家族の生命財産を守ることとは、どういう事でしょうか。
近代法治国家では、この「守る」という部分について、私達は、国家という共同体のために税金を払い、その見返りとして国家によって外敵から家族の生命財産を守ってもらっています。しかしその内容は、物理的な外敵、他国からの侵略、泥棒、強盗、などの暴力的犯罪や、紛争に対する合理的裁定とその強制といったことが主です。日常生活はもとより、病気や老後の生活については自分達で守らねばならない事が数多く残されているのです。また、それを支える経済的な基盤である職業、自営業であれば家業については、なおのこと自分自身で守らねばなりません。
主(あるじ)は、自分自身で守っている職業(家業)や財産によって、一家を養っています。したがって、一家の財産はたとえ主(あるじ)個人名義であっても、それを基盤にして一家を養っている以上、その財産は一家全員のものです。今の民法では、多くの場合主(あるじ)の個人財産という形式をとっていますが、実質的にはこのように一家全員のものなのです。その財産が相続によって得たものなら尚更ですが、本人一代で成したものであっても、財産形成過程での家族の役割り、いわゆる内助の功を考えれば、その成した財産すべてが本人のものとはいえません。
しかし、主(あるじ)本人が死亡するとどうでしょう。法律上、本人名義となっているのでその個人財産に対して莫大な相続税がかかってきます。配偶者は2分の1まで無税で相続できますが、配偶者は本人と同世代ですから、近々に発生する第二次相続で結局再び相続税がかかるので、相続税免除となるとはいえません。
相続税とは、一家一族の永遠の繁栄を願って、身を粉にして働き爪に火を灯して節約して貯めてきた結果としての財産に対して、一家の大黒柱という主(あるじ)を失って、まさにこれからその財産が最も一家に対して必要とされるその時に情け容赦なくかかってくる酷税(!)なのです。
最近の地価高騰後は、わずかな土地や家を持って自営している個人商店でも、何千万円、場合によっては何億円という相続税がかかってくる事もあります。
相続税を払えず、自分の住んでいるあるいは商売している土地や家を売らざるを得ない状態も生じています。
これでは、中世の封建領主の厳しい税の取立てに耐えかねて、村を捨てなければならなくなった百姓の姿と変わりません。
一家の主(あるじ)は、この相続税という酷税からも、一家の財産を守らなければいけません。相手は国家であり法律ですから、こちらは余程の知恵を使わなければ対抗できません。むろん、法治国家の建前を崩すわけにはいきません。法律は、前述のように、私達にとって外敵から生命財産を守ってくれる武器なのですから。
そこで相続税から財産を守る知恵とは、違法・脱法ではなく、合法適法の範囲で節税することを意味します。最近の税法改正で、極端な方法はなくなりましたが、知恵を使い努力すればそれ相応の相続税の節税は十分可能なのです。
一家の財産を守るために、ここは「主関白」(あるじかんぱく)の見せ所です。
覚悟と知恵はおありでしょうか。主(あるじ)の果たすべき義務として、この相続税という酷税に立ち向かう用意がおありでしょうか。

(株)ハート財産パートナーズ 林 弘明


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