大家さん 困っていませんか? 
古貸家・古アパート

  事業用不動産という資産の優良性は、「収益性」と「換金性」という二つの物差しで計ります。
「収益性」は、その不動産の地代、家賃等の収入から、修理、修繕費、諸税公価等の支出を差し引いた純益を分子として、その不動産の時価を分母として割った数値、つまり「利回り」を計算して検討されます。この利回りが高い程、収益性の良い不動産であることは言うまでもありません。
「換金性」は、所有者がその不動産をお金に換えたいと望んだ際、どれだけスムースに妥当な金額で換金できるかといった性質のことです。
資産家にとって、収益性が低く換金性も悪い不動産は「不良資産」ということになります。そして、多くの資産家にとっては「貸宅地」「古貸家」そして「古アパート」が三大不良資産となっているのが実状なのです。
今回は、このうちの「古貸家」について、相続対策も視野に含めながら、どうしたら良いかを考えてみましょう。
一口に古貸家といっても、様々な条件と事情のあることでしょうが、月額家賃1万円から2万円位しか受け取っていない戸建貸家の場合、家こそは古くはあっても、それが建っている土地は坪あたり100万円も150万円もする土地で、その1軒の貸家の為に40坪も50坪も使っているという例は珍しくありません。
この古貸家の利回り収益性は1%にも満たず、また、一般に借家人付の低利回り物件は売れませんので換金性においても悪いといえます。借家人の立退きが出来れば、更地としてその土地を売ることは容易になりますが、借家法の規定によりそれは非常に難しいことなのです。
この古貸家のような不良資産を所有している資産家に、万一相続が発生した場合、相続税は不良資産といえども他の資産と同様に評価され、かつ資産家によっては、最高税率で50%の相続税が課税される場合もあります。
その不動産の収益性が高ければ、相続税納付を延納にして、その不動産からあがる収益で長期的に納税することができます。
また、その不動産の収益性が低く、延納が難しい場合でも、換金性が良ければ、それを売却して相続税を金銭納付することが出来ます。しかし、収益性も低く換金性も悪いというダブルパンチを受けた古貸家の場合、延納も売却金納も出来ません。
また、古貸家を土地・建物ごとに相続税納付の為、物納するという考え方もありますが、これはほとんどの場合、税務当局の物納収納基準で管理・処分不適として物納不可となります。こうして「古貸家」は資産家の相続にお手上げ状態を招いているのです。
こうした不良資産である古貸家を多く抱えている大家さんは、借家人に立退いてもらって、その土地の現在価値に見合った土地有効活用を計りたいと内心願っていることでしょう。しかし、借家法によって借家人を立退かせることは容易に出来ませんので、実際は大抵の場合あきらめてしまうのです。そして現実としては、ほんの少しずつでも家賃を値上げするように努力している一方、古い建物だからこそ余計にかかってしまう修理・修繕費を借家人に転嫁して負担させています。しかし、こうすることによって、借家人の「借家権」はより強いものとなってしまい、不良資産はより「不良化」していくことにお気付きでしょうか。
このような古貸家の不良資産の「優良化対策」は、数少なく限られたものではありますが、次の通りです。
1. 不動産経営者としての家主の原則に戻って、古い建物といえども、家主負担でしっかり修理修繕し、設備の改善を施し、そのかわり家賃を適正に値上げする。その際、近隣の家賃相場が参考になるでしょう。
2. 少々事が荒立つかもしれませんが、建物が古くなり、第1の方法のように追加再投資することに、不動産経営上、経済的合理性が無くなったとして、次回の契約更新を拒絶して、明け渡しの話し合いを持ち、場合によっては明け渡し訴訟も辞さないということです。
3. 借家人に土地・建物を買い取ってもらうという方法は、ある程度高い値段で借家人が買取ってくれるならば、相続発生後、借家人へ売却して譲渡所得税が減免される特例適用を受け取ると有利です。
しかし、売値があまり高く期待できないのなら、相続発生前に借家人へ売却してしまいます。譲渡所得税税引き後の手取金が相当少なくなってしまっても、相続税はその少ない手取金にしか課税されませんから相続税自体が安くなる為、この方が有利な場合もあります。
4. 相続が発生した際、相続税納付の為に、その古貸家の土地の底地を物納する方法があります。但し、平成18年に物納制度が改正され、物納そのもののハードルが非常に高くなりました。従って物納申請自体が非常に難しくなりました。
古貸家といえども、土地の所有権は100%家主のものですから、その底地を物納するということは、家主がその土地の借地人となり、国が地主となる土地賃貸借契約を結ぶということです。この場合、土地の価値(相続税評価額)の約40%を国へ底地として物納できます。
5. さらに第4の方法の発展型として、新借地借家法の定期借地権を使って、国へ物納すべき底地をその評価額の80%にする方法も考えられます。定期借地権の底地物納については、当社(株)ハート財産パートナーズが借地借家法第22条一般定期借地権底地物納の全国第1号として物納した実績があります。契約内容について若干特殊な要件もありますので、この方法を採用する場合は当社へお問合せ下さい。
以上、古貸家という不良資産の「優良化」対策をいくつかあげましたが、いずれにしても、不動産経営においては、日頃からその不動産に対して常に十分な管理を施し、それが不良化してしまわないようにする事、つまり「転ばぬ先の杖」こそ肝要なのです。

(株)ハート財産パートナーズ 林 弘明


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